2013年12月15日

ワナナイト

休日を家でのんびりと過ごしていると、家人から「例のモノ」と
クリアフォルダを渡されて「例のモノってなんですか」という疑問が
私の顔に出ていたのかすかさず「ミスターXの原文」と補足の声が入ったのである。

あーあー、そうだそうだ。手配をお願いしていたのであった。すっかり忘れていた。

以前ここで私の義父が老人ホームで五箇条のご誓文を書き記したとかなんだとかと
どっかの一遍で述べたんですが、その五箇条のご誓文の原文がこそが
この「ミスターXの原文」なのですよ。今みたら五箇条どころか九箇条まであった。

以前、家人から「いつも大事そうに原文を抱えている」という話を聞いて、
ぜひとも読ませていただきたい(だっておもしろいに決まってる)と懇願したのが
もう一月前になるわけでして、まぁ一応断りを入れて「息子(私)が是非読みたい」ということを
素直に家人が伝えると「ほお!なんと正義感に溢れた息子さんなのだろう!よいですとも!」と
手渡され今に至るという。物事があらぬ方向に進んでるだけれども、ここで重要なのが

「誰も不幸せになっていない」 このことである。

生きていく上でこの道理を躓かずに進むのは真に困難だったりするけども、
まぁこういうこともあるんだなぁってしみじみ思うわけです。

いきなり「ミスターX」っていうおもしろ単語が出てきて皆さん不思議な顔をされていると
思われますが、ようはこのミスターXってのが施設でセクハラ騒動を起こした痴呆老人なんですよ。
名前もツラも素性も全部わかっちゃってんだけど、やはり悪としての椅子を用意しなきゃいけないのか
よくわからんお膳立てからはじまるわけで、読み進めて行くと静かな狂気を帯びつつ、
ミスターXに対して自らの正義に駆られた痴呆義父の暴走というかなんだかこれもまたロックな
感じで物事が進んでいく。正直ミスターXなんて単語を目にしたのはプロゴルファー猿以来ですよ。
そして今日も地球は回っているわけ。

A4の紙が合計4枚。おおまかな内訳は以下のとおりである。

●施設への嘆願書
●ミスターXへの警告書

どのA4用紙も達筆な字で見事に埋め尽くされており、
九箇条のご誓文は嘆願書にこう記されていた。

1、本人を呼んで事実を確認し、二度としない誓約書を出させる
2、上記1を添付して、被害届を警察署に届け出る
3、家族、親族への告知と退園勧告
4、全社員と入園者全員に事実を周知徹底させる
5、入園者の有志、又は全員の追放書を本人と親族に渡す
6、本人住居地の町内会に警告文書の配布
7、痴漢専門の弁護士の力を借りて、有効な手段の採用

追加項目

8、県内の介護施設の責任者にミスターXの情報を周知し被害を予防する
9、屈強な男子社員の0さん、Sさんに期待したいです

以上が九箇条のご誓文である。
間違っていないようで間違っていて、間違っているようで間違っていない。

そして私の心が最も震えたのはミスターXへの警告書であった。

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ミスターXへの警告書

先日XX日は主任のNさんに信じ難い性犯罪をして了った事を忘れはしないであろう。
具体的にはNさんがお前の席を通り過ぎる瞬間に、動物が獲物を狙って飛び掛るように
彼女の左側から飛びつき、左手で乳房をしっかりつかみ、上衣の上から触れると同時に
右手でお尻を触っていた。正に一瞬の出来事であった。

 これ等の手口は常習者のやり方で、素人ではできない行為である。
Nさんは逃げる様に、足早にその場を逃れて仕事場に移動した。

 この様な事が起きることを心配して、特に若い女性社員を守る為に
日頃から入園者の動向を特殊モニターで全て把握している。

お前が以前、或る婦人と2Fでした性行為は(中略)が、然し今回はまったく違う。

お前の体臭、指紋、声紋を全て採取してあるので、これからは
お前は全て監視されているし、特殊モニターが全て把握している。
今後お前のような痴漢は、天罰で早死にする様に楽しみにしている。
そしてこのままでは確実に地獄行きであろう。

若しも助かりたかったら、家族にも真実を話し、東京の警視庁に出頭して、
今までの犯行の全てを自白して助けを求めれば良い。終了

正義の味方より

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正義の味方からの警告文が
よっぽど悪のミスターXからの脅迫文のようである。

正気と狂気は紙一重であり、果たして私は自らを「正義の味方」として
身を置く覚悟を決める日がくるのであろうか。

なんだか冒頭が官能小説みたいだなと思いつつ、
「正に一瞬の出来事であった。」って締めが「池波正太郎」っぽくて
意味もわからぬまますこし安堵してしまった私がいるのも事実であった。

こういう滋養漲る文章が書けるようになりたいものである。
正義の味方が手書きで「乳房」や「お尻」などと書き記すのだ。
むしろそこまで細かい描写を覚えるまで凝視するならば
その場で諌めたほうがいいと思うのだが、それをいったら
世の中の経済活動なんて途端に破綻するようなものでる。

魂が宿った狂文というべきか、やはり本物には叶わない。叶わないのである。
特殊モニターってどんだけ便利な言葉なんだろうなぁ。






Posted by ダブルジェイ at 20:26│Comments(4)
この記事へのコメント
こりゃすげぇや…。
いや、ほんとにすげぇや…。
Posted by ダメンフィスダメンフィス at 2013年12月15日 23:02
途中までは、理路整然と書かれていた
正論っぽい文章が「特殊モニター」って
言葉が出てきた途端に、すっとこどっこいな
感じに、仕上がっちゃってるのが怖い。
Posted by 十兵衛軍曹 at 2013年12月16日 14:32
又吉イエスよりは慈悲がありますね。
Posted by corgicorgi at 2013年12月18日 22:25
各位>

この翌日、家人が買ったと思われる「めんどくさい人の対処法」という本がこれみよがしにテーブルに置いてあったのでいろいろと感慨深かったです。
Posted by ダブルジェイダブルジェイ at 2013年12月21日 00:47
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